事業承継税制の特例制度の創設
昨年末に、平成30年度税制改正大綱が発表となりました。
今回は、その改正の中で特に注目の一つである事業承継税制の特例について取り上げました。
1.特例制度の創設の背景
事業承継税制は、後継者が先代経営者から自社株を贈与又は相続により取得した際に課税される贈与税又は相続税が猶予される制度です(既報-YF00789)。現行制度は平成21年に創設されていますが、適用要件の厳しさ等から、制度の利用者が伸び悩んでいました。
そのような状況を背景に、今回の改正では、現行制度でネックとなっていた点を大幅に解消する特例制度が創設となりました(現行制度との選択適用になりました)。
2.現行制度と特例制度の主な比較
主な内容 | 現行制度 | 特例制度 |
---|---|---|
納税猶予の対象株式 | 発行済株式数の2/3までの株式 | 後継者が取得した全ての株式 |
対象株式に係る納税猶予額 | 贈与税・・・全額 相続税・・・相続税の80% | 贈与税・・・全額 相続税・・・全額 |
雇用維持の要件 | 承継後5年間は平均8割の雇用維持が必要 | 承継5年以内に平均8割の雇用を下回っても、要件を満たせなかった理由を記載した書類を都道府県へ提出すれば継続 |
先代経営者の要件 | 先代経営者一人のみ | 代表者以外の複数人からの承継も適用対象となる |
後継者の要件 | 後継者一人のみ | 代表権を有する複数人(最大3名)への承継も対象 |
今回の特例制度では、後継者が取得した全ての株式が対象となり、その株式に係る相続税についても全額が納税猶予となりました。また、雇用維持の要件も事実上なくなったといえます。さらに、先代経営者と後継者の対象範囲も広がったため、承継パターンの選択肢も増えると考えられます。
3.手続き
ただし、特例制度を受けるためには、平成30年4月1日から平成35年3月31日までの間に、認定経営革新等支援機関の指導を受けて、後継者や承継までの見通し等を記載した「特例承継計画書」を都道府県へ提出する必要がありますのでご注意下さい。
4.適用時期
平成30年1月1日から平成39年12月31日までの間の贈与又は相続について適用されます。
5.まとめ
現行制度と比較して計画書作成の手続きは増えますが、特例制度を利用する恩恵は大きいといえます。当法人は認定経営革新等支援機関となっておりますので、制度の利用を検討される際は、ぜひご相談下さい。なお、今後の国会の審議次第では内容が変更される場合もありますのでご留意下さい。
お問い合わせは当ホームページの無料税務相談コーナーからどうぞ。
(文責-久保田一成)
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