不動産セキュリティ・トークンについて
今回の横須賀通信では、不動産の新たな投資先として注目を集める不動産STについて、その仕組みと特徴、他の不動産投資商品との違い、税務上のポイントを整理してお伝えします。
不動産ST(Security Token)とは
不動産ST(セキュリティ・トークン)は、不動産に関する権利等の財産的価値を電子的に証券化した新しい投資手段です。暗号資産等で用いられているブロックチェーン技術を活用し、取引履歴や所有権情報を安全かつ透明に管理できる点が特徴です。
2020年の金融商品取引法改正により電子記録移転権利として制度化され、2021年には国内初の不動産STが発行されました。以降、累計発行額は3,000億円を超え、デジタル証券市場の新たな柱として注目されています。
不動産STがもたらす変化
従来の不動産投資は、特に現物の場合、「高額」「長期」「流動性が低い」という特徴がありました。これに対し、不動産STは少額から投資参入でき、売買も比較的容易です。
例えば、オフィスビルや商業施設などの不動産を一口単位の投資商品として分割し、その持分をデジタル証券として発行する仕組みです。投資家は、物件全体ではなくその一部の経済的価値(収益分配や譲渡益に関する権利)を取得する形で参加します。これにより、従来の「一棟単位の所有」から「デジタル化された権利単位の保有」へと投資の形が変化し、資産運用の柔軟性が大きく向上しました。
不動産STと他の投資先との比較
不動産STは、クラウドファンディングやREITと並ぶ「デジタル不動産投資」の新潮流です。それぞれの特徴を整理すると次のようになります。
| 投資手段 | 投資単位 | 流動性 | 主な特徴 | リスク等 |
|---|---|---|---|---|
| 現物不動産 | 数千万、 数億円~ |
低 | 不動産を直接保有・運用する投資手法。 運用の自由度が高い。 |
空室、維持管理修繕にかかる必要諸経費リスク等 |
| 不動産ST | 数万円~ | 中~高 | ブロックチェーン技術を活用して発行されるデジタル証券。 少額から不動産投資が可能で、比較的高い透明性と資産管理の効率性を備える。 |
価格・賃料変動、市場流動性リスク等 |
| 不動産 小口化商品 |
数万、 数百万円~ |
低 | 主流の任意組合型では、不動産の一部を所有し、出資分に応じてオーナーとなる。 一方、匿名組合型は事業者に出資し、事業者が所有し運用する。 |
信用リスク(事業者リスク)、価格変動リスク、換金制約等 |
| 不動産クラウド ファンディング |
1万円~ | 低 | インターネット上で少額投資が可能。事業者が不動産を所有、運用、利益の分配をする。 | 信用リスク(事業者リスク)、価格変動リスク、換金制約等 |
| J-REIT | 数万円~ | 高 | 複数の不動産に分散投資する上場金融商品。 証券取引所を通じて売買できる。 |
価格・賃料変動、市場流動性リスク等 |
上表に加えて、不動産STはクラウドファンディングよりも透明性と流動性に優れ、J-REITよりも投資対象の選択自由度が高い点が特徴です。
今後、制度整備が進めば、J-REITのような市場流通性を持ちながら、クラウドファンディングの手軽さを兼ね備えた投資形態としてより一層成長する可能性があります。
税金について
前述のとおり不動産STにかかる特徴等に触れてきましたが、メリットもある一方で留意しなければならない点もあります。
税金面では、個人投資家の公募・受益証券発行信託型の場合における、課税場面は主に以下の3場面が想定されます。
| 場面 | 区分 | 備考 |
|---|---|---|
| 保有中 | 配当所得 | 源泉20.315%。公募なら「上場株式等」扱いで 申告分離の選択・損益通算も可。 |
| 売却時 | 株式等に係る譲渡所得 | 申告分離課税20.315%。 取得価額は減額調整後の金額を使う点に注意。 |
| 元本払い戻し時 | みなし譲渡 | 譲渡原価=自分の取得価額×元本減少割合。 取得価額を減額して次回へ持ち越す。 |
以上で取り上げた不動産STは、今後の制度整備や市場の拡大が見込まれ、他の投資先にはない利点もあり、まだ十分に浸透しきっていないブルーオーシャン的な領域であるともいえるでしょう。
その一方で、他商品と同様に市場における価格・賃料変動リスク等のリスクもあり、不動産STに限らず投資判断をする際には「想定利回り〇〇%」という目先の利益だけにとらわれず、その投資手段の制度設計や運営事業者、対象不動産の概況等を総合的に考慮したうえで投資判断をすることが、ご自身の資産を必要以上に損失させることを予防するために重要です。
なお、本記事は一般的な公表資料に基づいた制度等の整理解説であり、特定銘柄の推奨・投資助言を意図するものではありません。個別の判断は、税理士等の専門家にご確認ください。
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