ピアノの「ラ」の基準音と地価の基準
昨今、株式会社横須賀不動産鑑定事務所では、空き家を再生し、活用することに力をいれてきましたが、勢い余って建物に限らず、古くて活用されないピアノも再生し活用してみたく、本社ビルに100年前のピアノを迎えいれることにしました。
調律の日、何気なく調律師の方の作業を眺めていましたが、「今回は440Hzにしますか。それとも442Hzにしますか。」と尋ねられました。
音楽初心者の私には意味がわからず、何のことか質問に質問で返すと、基準となる「ラ」の音を決めないといけないそうなのです。
ラの音は世界中どこでも同じHz(ヘルツ)だと思っていましたら、話を聞いてみると、現在、国際標準では中央のラ(A4)は440Hzとされているとのこと。しかし、実際の演奏会やオーケストラでは442Hzや443Hzが採用されることも珍しくないとのこと。
さらに歴史を遡ると、地域や時代によって基準音は大きく異なっていました。バロック時代には中央のラ(A4)は415Hz付近が用いられたこともあり、現在の440Hzとはかなり違う世界だったようです。
私はその話を聞きながら、毎日のように向き合っている「不動産価格」と、とてもよく似ていると思いました。
地価公示という「基準・指標」となる地価
不動産の世界にも、地価公示というまさに地価を公示する制度があります。
一般には「土地の時価」と理解されることが多いのですが、実際には市場で成立する全ての価格と一致するわけではありません。
例えば東京都心の商業地では、公示価格を大きく上回る価格で取引されることが多々あります。東京の住宅地では昔はそれなりに公示価格は説得力のある水準が公表されていましたが、最近は、やはりそれ以上の価格で取引されることも多い印象です。
一方で人口減少が進む地方では、公示価格より低い価格でなければ売却できないケースもあります。また、用途や賃貸借の契約内容によっても価格は大きく変わってくることがあります。
つまり地価公示は、市場価格を測るための重要な基準ではあるものの、現実の取引価格そのものではないですし、むしろ大きく乖離することも多々あるのです。
440Hzというラの国際標準が存在しながら、実際のコンサートなどのプロの演奏家は442Hzを当然のように基準とする状況によく似ているように感じます。
「正しい価格」は一つなのか
不動産鑑定の仕事をしていると、「この土地の本当の価格はいくらですか」という質問を受けることがあります。しかし市場参加者や利用目的が異なれば、同じ不動産でも価値の見え方は変わります。
投資家が見る価格と、自宅として利用する人が考える価格は必ずしも一致しません。
価格も音も、生き物のように時代とともに揺れ動いているのですね。アンティークピアノの調律から、不動産価格の本質について改めて学ばされた気がします。
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