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遺産分割などの鑑定評価の価格時点

投稿日2025.08.08

令和5年分における被相続人数(死亡者数)は 1,576,016 人(前年⽐ 100.4%)でした。 年々死亡者は増えていく見込みです。そのうち相続税の申告書の提出に係る被相続人数は 155,740 人(同 103.2%)でした。相続が発生した件数のうちの一割程度が相続税の申告をしている計算となるのですが、相続という事象で生じる手続きは相続税の申告だけにとどまりません。

大なり小なり遺産があれば、それを親族等で分ける対応が出てきます。これを遺産分割と言います。遺言書や遺産分割協議によって相続財産を配分していくわけですが、その不動産の時価を不動産鑑定士が鑑定するということが多々あります。

そこで問題となるのがいつの時点(価格時点)で財産を評価するかです。

相続税と遺産分割の価格時点の違い

相続税の申告に関しては、シンプルに、亡くなった方の「相続開始時点」での時価を把握して納税することになるのですが、これはあくまで税務署が相手であるため。

一方、遺産分割の場合には、調整の相手方は税務署ではなく、相続人間(民民)になります。つまり争いがあれば、家庭裁判所や調停等で決めることになります。
裁判所は税務署とは価格時点の捉え方が異なり、遺産分割は「遺産分割時点」で評価を求めるのが一般的です。

これは、相続開始から遺産分割までに時間が経過していることが多く、不動産価格が変動する可能性があるため、相続人間の公平性を保つための対応です。

ただし、相続人全員の合意があれば、相続開始時点(被相続人死亡時)の価格で評価することも可能です。

裁判所でもイレギュラーな遺留分侵害額請求の価格時点

ただし、裁判所で鑑定評価を行って、時価を決めてもらうケースの中には、単純な遺産分割のケースのみならず、遺留分侵害額の請求にかかる事件があります。ざっくり言うと、法定相続割合の半分ももらえていない方がいると、遺留分を侵害したとして、紛争が生じることがあります。

ここで注意が必要なのは、遺産分割に関連するものの、遺留分侵害額の基準となる価格時点は「相続開始時点」となる点です。

なぜなのか考えてみると以下の理由があります。

観点 内容の要旨
ア. 民法の明文 改正後民法1043条1項(旧1029条)は「被相続人が死亡時に有していた財産の価額」を遺留分算定の基礎と定めています。
条文自体が死亡時基準を明示しているため、原則としてその時点で固定されます。
イ. 最高裁の確立判例 最高裁昭和51年3月18日判決では、遺留分算定のために持戻す贈与財産等の評価時点を「相続開始の時」と判示。下級審でも一貫して同趣旨が踏襲されています。
ウ. 権利発生のタイミングと遡及的効果 遺留分権は被相続人の死亡と同時に当然に発生します。旧法下では減殺の効果が「遡及的」に相続開始時へさかのぼり、改正後は金銭債権化されたものの、発生時点は依然として死亡時。したがって、その時点の財産価額で最低保障分を確定するのが筋となります。
エ. 公平性・予測可能性 死亡後に株価や地価が急変する例は多いですが、遺留分は「死亡時に確保されるべき最低限」を守る制度。評価時点を後ろへずらすと、価格上昇を狙った引き延ばしや逆に値下がりリスクの押付けが起こり、公平を損ないます。
オ. 他の相続調整制度との整合性 特別受益(903条)や寄与分(904条の2)の評価も死亡時を基準とするため、遺留分のみ異なる時点にすると全体の計算が齟齬を来します。
カ. 実務上の訴訟運営 裁判所は「死亡時に各相続人が得るべき額」と「実際に取得した額」を比較します。もし分割時基準を採ると、証拠調べが際限なく複雑化し、訴訟経済に反します。

まとめ

価格時点については、法律の規定によって明確に定まっている場合もあれば、相続人全員の合意があれば他の評価方法も選択可能なこともあります。
評価方法で意見が対立する場合は、専門家に相談の上決定するのがよいでしょう。

相続財産の鑑定評価は当法人ホームページの無料相談コーナーからどうぞ。

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