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非上場株の評価ルール見直し、ポイント解説します

投稿日2026.10.16

非上場会社の株式(自社株)は、相続や贈与の際に「財産評価基本通達」に基づいて評価されますが、この評価ルールが大きく見直されようとしています。

国税庁では令和8年4月から「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を開催しており、9月16日の第6回会議では具体的な計算方法の案が公表されました。

議論の状況次第では、12月に公表される令和9年度税制改正大綱に盛り込まれ、早ければ令和10年1月から新たな評価方式となる見込みとも言われています。

今回の横須賀G通信では、有識者会議の資料をもとに、非上場株式の評価がどう変わりそうか、そして会社経営者・後継者の方が今から押さえておきたいポイントを分かりやすく解説いたします。

なぜ見直しが行われるのか

現行ルールでは、会社を規模によって「大会社・中会社・小会社」に区分し、大会社は類似業種比準方式(上場企業の株価をもとに計算)、小会社は純資産価額方式(会社の資産を時価に洗い替えて計算)を原則として評価します。

一般的に類似業種比準方式のほうが評価額が低くなりやすいため、会社の規模が大きいほど株価が相対的に安く評価されるという不公平が生じていました。令和6年の会計検査院の報告でもこの点が指摘され、さらに会社規模や利益を意図的に操作して評価額を圧縮するスキームが横行していることも問題視されています。

見直しの方向性(第5回有識者会議資料より)

(1)会社規模による区分を廃止
大会社・中会社・小会社の区分をなくし、規模にかかわらず単一の評価方式で評価する方向です。

(2)類似業種比準方式は廃止の方向
理論的な根拠や実証的な裏付けに乏しく、上場企業の縮尺モデルを中小企業に当てはめるのは妥当なのか、という観点から、存置は困難との考え方が示されています。

(3)時価ではなく「簿価」をベースに
事業を続けていく会社を、解散を前提とした時価で評価するのは適当ではないとして、帳簿上の純資産(簿価純資産)を使う方向です。

新たな評価方式「残余利益方式」とは

新たに主軸とされる見込みなのが「残余利益方式」です。考え方はシンプルで、

株式評価額 = ①簿価純資産 ± ②一定期間の予測利益(残余利益)×斟酌率

となります。

①は直前期末の貸借対照表の純資産合計です。土地や建物を時価に洗い替える必要がなく、建物・設備等は減価償却後の帳簿価額を使います。

②は、理論的には将来の無限期間分の当期利益の割引現在価値とすべきものですが、将来利益の計算は恣意的な予測になってしまうため、課税時期前数年分の正常利益実績値を使うことが検討されています。有識者からは5年分が良いのではないかという意見が出ています。期待される利益を現在価値に割り引くための基準となる「還元率」は、上場株式の平均期待収益率などを参考に算定する案が示されています。

その結果、
・期待収益率以上に稼いでいる会社 → 簿価純資産より高い評価額
・期待収益率を下回る会社や赤字の会社 → 簿価純資産より低い評価額
となる仕組みです。

③斟酌率については、有識者会議においては1.0~0.7までの数パターンでシミュレーションをしています。

計算に必要な資料は、直前期末の貸借対照表と過去数年分の損益計算書等が中心となり、複雑な業種目の判定なども不要になるため、評価作業自体は簡素化される見込みです。

ただ、この残余利益方式に対しては有識者会議の中でも反対意見が出ており、このまま税制改正大綱に盛り込まれるか、全く別の方式が示されるのか、現時点では不透明です。

純資産価額方式・配当還元方式はどうなる?

(1)純資産価額方式
原則的な評価方式からは外れ、資産管理会社など「特定の評価会社」の株式を評価する方式として位置付ける方向です。退職給付引当金を負債に含めるかどうかや、法人が取得した貸付用不動産の取扱いなども今後の検討事項とされています。

(2)配当還元方式
少数株主向けの特例的な評価方式として存置されますが、適用できる株主の範囲が見直される見込みです。あわせて、最低配当を2.5円とする計算方法や、従業員持株会の株式の取扱いも検討対象とされています。

評価額を下げる「スキーム」への対応も

今回の見直しでは、評価額圧縮スキームへの対策も盛り込まれる方向です。

(1)利益の操作への対応
オペレーティング・リース、多額の役員報酬、一時的な役員退職金などで利益を一時的に下げる手法に対し、非経常的な損益を除いた「正常利益」で評価する方向です。

(2)グループ法人を使った対策への対応
親会社の資産を100%子会社へ移して親会社の株価を下げる手法に対し、完全支配関係にあるグループは全体で評価する方向です。

(3)配当還元方式の濫用への対応
株主構成や議決権割合を操作して配当還元方式を使う手法について、適用範囲を整理する方向です。

これまで一般的だった「役員退職金を支給した年に株を移す」といった対策は、新ルールのもとでは効果が限定的になる可能性があります。

まとめ

今回の見直しは、現時点ではまだ有識者会議における「方向性・案」の段階であり、具体的な計算方法や適用時期は今後の税制改正大綱などで明らかになります。

利益が安定して出ている会社は評価額が上がる可能性がある一方、低収益・赤字の会社は下がる可能性もあり、会社ごとに影響は異なります。12月の税制改正大綱の発表に向けて、まずは自社への影響をイメージしておくことをおすすめします。

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