脱炭素化に向けた建築分野の法令改正
政府は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロとするため、2030年度に46%削減する等の目標を2021年10月に閣議決定しました。今回は、脱炭素化に向けた建築分野における最近の法令改正動向をお伝えします。
脱炭素社会の実現に資する~(中略)~法律等の一部を改正する法律
2022年6月に公布、2023年4月から2025年4月の3年度にわたり施行が予定されています。
(1) 建築物省エネ法の改正
省エネルギー基準の適合義務対象外である住宅及び小規模建築物の新築について、2025年度の適合義務化を決定しました。これにより断熱性能向上などが求められます。
(2) 建築基準法の改正
脱炭素化に資する (1)省エネ化推進 (2)木造化促進 (3)既存建築物の長寿命化、等の観点から多くの改正がなされ、このうち今年4月1日に主に以下が施行されました。
分類 | 概 要 | 改正内容 |
---|---|---|
(1) | 建蔽率・容積率に係る 特例許可の拡充 |
外壁の外断熱改修、日射遮蔽の庇、壁面太陽光パネル設置等、省エネ性能向上・再エネ設備設置により容積率・建蔽率を超過した場合の特例許可制度を創設 |
高さ制限に係る 特例許可の拡充 |
太陽光パネル一体化屋根材改修、屋根の外断熱改修、太陽光パネル等設置で高さ制限を超過した場合の特例許可制度を創設 | |
住宅等の機械室等 容積率不算入 |
住宅、老人ホーム等で、省エネ性能向上に資する給湯設備を設置した機械室等を容積率不算入とする認定制度を創設 | |
(2) | 階数に応じて要求される 耐火性能基準の合理化 |
木造による耐火ニーズの高い中層建築物(5~9階)に適用される最下層の耐火性能基準を、2時間から90分に短縮(60分から30分単位にきめ細かく変更) |
(3) | 住宅の採光規定の見直し | 規定適用外の事務所等から住宅への用途変更(ストック活用)対応、開口部の省エネ対策推進等のため、住宅居室の採光に必要な開口部面積を1/7以上から1/10以上とした |
一団地の総合的設計制度等の対象行為の拡充 | 一団地の総合的設計制度等(一定要件の下で一団の土地の区域を一の敷地とみなす制度)の対象行為に大規模修繕を追加、例えば無接道敷地の建築物でも省エネ性能向上等の大規模修繕が可能となる |
自治体の条例改正(太陽光発電設備の設置義務化)
東京都が2022年12月に「東京都環境確保条例」を改正し、2025年4月から、全国に先駆けて新築戸建て住宅への太陽光パネル設置を義務付けました。義務化はビルを含む一定数以上を新築する約50社の大手事業者に対し、2,000㎡未満の中小規模建築物が対象となります。
また、川崎市でも、今年3月17日に「川崎市地球温暖化対策推進条例」改正案が可決され、東京都とほぼ同内容で、同時期の2025年4月の義務化が決定しました。
まとめ
各自治体は、住宅供給事業者等及び施主・購入者等への補助金等の各種支援策を用意し、国は省エネや長寿命化に資する新築や改修工事に対して多数の税制優遇、助成制度(補助金)、融資制度の優遇措置を拡充しており、脱炭素化の取り組みが本格化していることが伺えます。
2030年、2050年に向けて、脱炭素化の流れはより加速していくでしょう。
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