リバースチャージとインボイス
10月1日のインボイス制度導入まで残り4ヶ月となりました。横須賀G通信読者の皆様におかれましては、取引先のインボイス登録番号の確認など着々とインボイス制度対応の準備をされていることと思います。
この中で、先日、電気通信利用役務の提供に係るインボイスについての質問を受けました。
電気通信利用役務の提供に係る消費税は平成27年改正によってある意味理論的な制度に改められたとも言えますが、それだけにリバースチャージ方式や登録国外事業者制度の導入などで制度が複雑になってしまい、その上に今回インボイス制度が加わることでさらに分かりづらくなっています。
今回の横須賀G通信では、電気通信利用役務の提供に係る消費税制度を改めて整理し、その上でインボイス制度に関する経過措置の解説をいたします。
電気通信利用役務の提供とは
「電気通信利用役務の提供」とは、インターネット回線などを介して行われるクラウドサービスの提供、電子書籍や音楽、ソフトウエア等の配信、ネット広告の配信などを指します。
そして、この「電気通信利用役務の提供」は、(1)事業者向けサービスと(2)消費者向けサービスに分類されます。誤解が多いのですが、この分類は、実際に事業者がサービスを受けているか、一般消費者がサービスを受けているかではなく、「役務の性質から一般的に」事業者向けサービスに該当するか消費者向けサービスに該当するかにより一律に分類されるものです。
(1)事業者向けサービスの例
インターネット上での広告の配信やゲームをはじめとするアプリケーションソフトをインターネット上の Web サイトで販売する場所を提供するサービス
など
(2)消費者向けサービスの例
・インターネット等を通じて行われる電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウエア(ゲームなどの様々なアプリケーションを含みます。)の配信
・顧客にクラウド上のソフトウエアやデータベースを利用させるサービス
・顧客にクラウド上で顧客の電子データの保存を行う場所の提供を行うサービス
・インターネット上のショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス(商品の掲載料金等)
など
上記の通り、昨今事業者がよく利用している「クラウド上にデータ保存するサービス」などは消費者向けサービスに分類されています。
消費税の課税方法
国外事業者から国内事業者が電気通信利用役務の提供を受ける場合のインボイス制度導入後の課税関係をまとめると下記の通りとなります。
役務の種類 | 条件 | 課税区分 | 課税仕入とするための必要書類 |
---|---|---|---|
事業者向けサービス | 課税売上割合95%以上 | 不課税仕入 | - |
95%未満 | リバースチャージ※1 | 帳簿記載のみ (インボイス不要) |
|
消費者向けサービス | 役務提供者が インボイス事業者 (現:登録国外事業者※2) |
課税仕入 | インボイス |
それ以外 | 不課税仕入 | - |
※1 リバースチャージ方式
本来国外事業者が納税すべき消費税を国外事業者の代わりに役務を受けた側が預かって納税する仕組みです。
(仕訳例)
支払手数料 1,000円 / 現金 1,000円
仮払消費税 100円 / 預り金 100円→国外事業者の納付すべき消費税を預かる。
※2 登録国外事業者
国税庁長官の登録を受けた事業者のことで、この事業者から受ける消費者向けサービスについては、その仕入税額控除を行うことができることとされています。
下記サイトから登録国外事業者を確認することができます。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/cross/touroku.pdf
登録国外事業者からインボイス事業者への移行
この登録国外事業者制度はインボイス制度導入に伴い令和5年10月1日に廃止されることになっています。ただし、登録国外事業者が「登録の取消を求める旨の届出書」を提出しているなど一定の場合を除き、原則として令和5年10月1日にインボイス発行事業者の登録を受けたものとみなされ、インボイスを発行することができるようになります。
また、この経過措置により適格請求書発行事業者となった国外事業者については、適格請求書等に適格請求書発行事業者の登録番号を記載等することにつき困難な事情がある場合には、令和5年10月1日から令和6年3月31日までの間は、登録国外事業者名簿に記載された登録番号を記載することができることとされています。
国外事業者からの電気通信利用役務の提供を受けている事業者は、まず、そのサービスが事業者向けサービスか消費者向けサービスかを判定し、消費者向けサービスであればインボイス登録番号を確認する必要があります。
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