個人の金融資産が1,400兆円あると言われているが
個人の金融資産が1,400兆円もあるという議論がなにかと話題になっています。
今回のFAX NEWSはこの議論についてです。
個人資産1,400兆円をキーワードとする議論には例えば次のようなものがあります。
1.日本の公債(国債・地方債等)の残高は,GDPの1.3倍にあたる660兆円もあるが、個人金融資産が1,400兆円もあるから心配はない。
2.いや1,400兆円といっても、そのうち郵便貯金や銀行預金は約751兆円で、郵便貯金は特殊法人に貸出され、銀行預金は不動産・流通・建設・ノンバンクに貸出されており、これらが不良債権化しているので安心は出来ない。
3.1,400兆円をうまく誘導し証券投資や住宅投資に回せばデフレは退治される、と。
こうした議論には、日本人1億2,700万人は1,400兆円の金融資産を持っている、いいかえれば、1人当たり1,100万円、標準世帯は2.8人ですから一世帯当たり3,080万円の金融資産を持っているという前提があります。
ところで個人金融資産1,400兆円は日銀作成の金融経済統計月報の中で四半期ごとに公表される「金融資産負債残高表」に掲載されています。
資産 | 負債 | ||
(1) | 現 預 金 | 751 | – |
(2) | 家計部門の借入(住宅ローン等) | – | 328 |
(3) | 株式やその他の証券 | 211 | – |
(4) | 保険や年金の準備金 | 402 | – |
(5) | 預け金、未収未払金 | 54 | 63 |
(6) | 金融資産・負債差額 | – | 1,027 |
合 計 | 約1,418 | 約1,418 |
この表で理解されることは、金融資産1,400兆円はすぐには使えないお金を含み、その上借金を控除しない金額であることです。
いつでも使えるお金は(1)と(3)の合計から、(2)の家計部門借入を差引いた (751+211-328) 634兆円であり、これを世帯数4,535万世帯(1億2,700万人÷2.8人=4,535万世帯)で割ると634兆÷4,535万世帯=1,398万円となります。
この金額は平成12年末の総務省統計局の貯蓄動向調査が1世帯当たり1,243万円であったことと大方符合するといえます。
ところで、今の政治家は、この様な統計の見方を理解しているのかどうかは疑問ですが、1,400兆円をベースとした即ち、国民1人当たりが1,100万円を持っていることを前提に政策立案がなされている様に思われて仕方がないのです。
それは、親が子供への住宅取得のための生前贈与を5,000万円までは特例を認める様にと与党の政調会長がつい最近まで叫んでいたことからも、これを証することができます。
今は夏本番、ゆっくり我が家の貯金通帳を再確認してみてはいかがですか。さてさて・・・
(函館大学客員教授の磯村元史先生「”個人金融資産1,400兆円”はほんと?」より引用)
(文責-横須賀 博)
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