地震によって建物が倒壊した場合の責任の所在
ニュージーランド地震の建物倒壊現場の様子が日々報道されますが、東京都心で直下型地震が起きた場合には、これを遥かに超える数の建物の倒壊や死傷者が出ることが予想されています。残念ながら日本でも、昭和56年以前の旧耐震基準の建物に関しては、大規模地震による倒壊リスクが比較的高いといわれています。
そこで、今回のFAXNEWSでは、建物の倒壊で人が死傷した場合に、建物所有者が被災者に対して、どう責任を負うのかについて考えたいと思います。
1.[原則] 地震は自然災害ですので、被災してもそれは誰の責任でもありません。
民法上、建物の「設置又は保存に瑕疵」があった場合、建物所有者は、損害を受けた者に対して責任を負います。しかし、自然災害等の不可抗力による倒壊は、原則として建物の「設置又は保存に瑕疵」があったとは認められません。それは例え倒壊リスクの高い昭和56年以前の旧耐震基準の建物であっても同じです。建物は建築当時の基準を満たしていれば、最新の基準を満たしていなくとも合法であり、「瑕疵」があるとは言えないからです。このため、阪神淡路大震災では、多くの建物が倒壊しましたが、建物所有者が被災者から責任を問われることは殆どありませんでした。
2.[例外]建物所有者等が一定の責任を負うとされた判例もあります。判例から想定される例は、
(1) 欠陥工事により建物や設備が損傷して、建物として通常備えるべき安全な性質・状態を欠いている場合には、所有者や施工者が被災者から責任を問われる可能性があります。そして、その事実を所有者が知っていたか、知らなかったかは関係ありません。
(2) 建築後の違法な増改築等によって、建築基準法により要求されている耐震性を備えていない場合に、増改築をした所有者や賃借人等が被災者から責任を問われる可能性があります。
(3) 建築年数が経ち、構造上の不具合が序々に発生してきていることが明らかであるにも拘わらず、メンテナンスを怠ったことによって、大地震の周辺地域(震度5程度の地域)で、その建物だけ人が死傷した場合には、被災者から責任を問われる可能性があります。
上記に加え、阪神淡路大震災以降は「建築物の耐震改修の促進に関する法律」によって、特定建築物(例:店舗・事務所・共同住宅等で3階以上且つ床面積1,000平米以上)の所有者は、耐震診断を行い、必要に応じて耐震改修を行うよう努めなければならないとされています。
今のところ努力義務ですが、建物の安全に対する考え方は変わりつつあり、近い将来「耐震改修未了」という事実が瑕疵とされる時代がやって来るかも知れません。いずれにしろ、耐震改修未了のビルにテナントは集まりませんし、倒壊すれば所有者も甚大な損害を被るわけですから、古いビルの所有者は速やかに耐震診断・改修などを済ませておくことが望ましいでしょう。
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(文責-横須賀 博)
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