マンション家賃上昇
物価上昇が続く中、マンションの募集家賃が上昇し、更新時に増額するケースもみられるようになりました。
今回の横須賀G通信では、最近の家賃動向をお伝えします。
募集家賃の上昇
東京23区の賃貸マンションの平均募集家賃は、ファミリー向きを中心にコロナ禍を経て2年ほど前から大きく上昇しています。全国の他の主要都市部でも同様の傾向がみられます。
・東京23区の平均募集家賃の推移(2020年1月=100)
※アットホーム調べ “「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向 ” データをもとに指数化し作成
・全国主要都市のマンション募集家賃・前年同月比(2024年3月) (単位:%)
※アットホーム調べ ”「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向 ” データをもとに作成
上昇の背景
マンション家賃上昇の主因は建築費上昇等による分譲マンション価格の高騰で、購入を諦めた層が賃貸にシフトしたことで賃貸需要が強まっています。国土交通省「不動産価格指数」によると、マンション価格(主に中古を対象)は過去5年間で全国平均35%上昇、東京都では39%上昇しました。
そのほか、背景として以下が考えられます。
・経済再開に伴う都市部への人口流入
新型コロナが感染症法上「5類」に移行し、出社機会が増え職場に近い都市部での賃貸需要が再び強まった。
・資源高などに伴う維持費上昇
共用部の電気代、人件費含む設備維持管理費用の上昇により家賃に上昇圧力がかかっている。
・入居者の家賃負担能力の高まり
大企業を中心とした賃上げにより、共働き世帯のファミリー向き、カップル向きで家賃を引き上げやすい環境になった。
・再開発事業等
コロナ禍で凍結していた駅前再開発や商業施設開業計画の再開が寄与している地域もある。
更新時家賃の上昇
募集時及び新規契約時の家賃(以下「新規賃料」という)が上昇している状況を受け、貸し手が既存の入居者に対しても更新時の家賃(以下「継続賃料」という)増額を打診する例が増えています。
賃貸住宅に特化した不動産投資信託(J-REIT)のアドバンス・レジデンス投資法人が公表する2024年1月期決算資料によると、契約更新時に約半数に増額交渉を行い、うち6割強の入居者が応諾し、更新対象住戸全体の賃料変動率が+1.2%で過去最高水準となりました(過去+0.5%、+0.9%、+0.8%と推移)。
同じくJ-REITの野村不動産マスターファンド投資法人が公表する2024年2月期決算資料によると、賃貸住宅の更新対象住戸で更新時に増額改定した割合は24%(据置76%)で過去最高となっています(過去5.3%、9.5%、9.4%と推移)。
消費者物価指数(CPI)の上昇
※総務省資料より作成
以上の賃料上昇圧力を反映して、賃貸住宅の家賃動向を示すCPI「民営家賃」指数(全国)は、対前年度比で1998年度以来25年ぶりにプラスとなりました。
この指数は調査地区内のすべての民営借家を継続して対象とした調査で、デフレ下で長年にわたって家賃は「上がらないもの」とされていましたが、物価上昇の波がついに家賃にも波及し始めたことが示されました。
なお、東京都区部の同指数は2018年度よりプラスに転じています。
まとめ
弊社でも賃貸不動産の管理会社等より更新時の賃料値上げに関する話を聞き及ぶようになりました。今後も新規賃料の上昇が続くことで、更新時の増額要求も増えることが予想されます。
但し、定期借家契約を除く普通借家契約の借主は借地借家法により保護され、契約開始時やその後に合意した賃料が尊重されるため、継続賃料は新規賃料と同額にならないことが通常です。
鑑定評価における考え方でも、まずその物件の市場競争力に応じた新規賃料を査定のうえ、過去からの経済事情変動の程度、契約締結の経緯等を考慮して新規賃料との間で決定することとなります。
増額要求する場合には丁寧な説明を心がけ、要求された場合には納得のうえ、双方が合意することが重要です。
お困りの際には弊社鑑定事務所へご相談ください。
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