中小企業の退職給付会計
2000年4月1日以降開始事業年度から退職給付会計という新会計基準が導入されます。
大枠の説明は既報(YF-00145)に譲りますが、現実問題として中小企業が新会計基準にどう対応したらよいか、今年3月末の決算会社を例としてお伝えします。
目次
最初にA,Bの2つの数値を以下の簡便な方法で算出します。
A.退職給付債務の計算
(a)退職一時金制度のみの会社
今年3月末の自己都合要支給額を退職給付債務とします。
(b)企業年金制度のみの会社
直近の年金財政計算上の責任準備金をもって退職給付債務とします。
(c)一時金制度の一部を年金制度へ移行している会社
移行部分と未移行部分のそれぞれの退職給付債務を(a)、(b)の方法で算出します。
B.年金資産
3月末日における公正な評価額を入手します。
上記の簡便な方法が認められるのは従業員が300人未満の会社です。
ただし、300人というのはあくまでも目安なので、公開会社の子会社は親会社の指示通りに、また商法監査適用会社等は監査人と相談した上で採用することになります。
次に会計基準変更時差異(前期以前の引当金不足額)を算出します。
新会計基準の適用初年度のみですが、前期末の退職給付債務から前期末年金資産、前期末退職給与引当金の残高を控除して求めます。この額を今後15年以内に定額法で償却します。
最後に今年3月末の決算書に計上すべき退職給付引当金、退職給付費用を、仕訳を起こして求めます。その計算例と仕訳は以下の通りです。
退職給付債務 イ |
年金資産 ロ |
退職給与引当金 ハ |
支払退職金 ニ |
支払保険料 ホ |
会計基準変更時差異 ヘ |
退職給付引当金 ト |
退職給付費用 チ |
|
前期末 | 1,000 | 200 | 500 | – | – | 300 (イ-ロ-ハ) |
– | – |
今期中 | – | – | – | 100 | 60 | 20 | – | – |
今期末 | 1,200 | 300 | – | – | – | 280 | 620 | 280 |
A:科目を変更します。
(借)退職給与引当金500 (貸)退職給付引当金 500
B:会計基準変更時差異を償却します(15年)。
(借)退職給付費用 20 (貸)退職給付引当金 20
C:退職金と保険料を支払った時。
(借)退職給付引当金 160 (貸)預金 160
D:(今期末イ-ロ)- (前期末イ-ロ-C)
(借)退職給付費用 260 (貸)退職給付引当金260
上記の結果、決算書の退職給付引当金は620、退職給付費用は280と算出されます。
なお、税法上の損金計上可能額はこれまでと変わらないため差額が生じますが、この額は申告上調整することになります。
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