非上場株式の評価の矛盾
国税庁が定める財産評価基本通達によると、非上場株式の評価手法には純資産価額方式、類似業種比準方式並びに配当還元方式の3つがあり、具体的な事例に即応した評価方式が定められています。しかし、その評価手法によると明らかに矛盾をきたす場合が生じます。今週のFAX NEWSはその具体的例示です。
1 類似業種比準方式
類似業種比準方式とは、類似業種の平均株価を基礎に1株当たりの配当金額、年利益金額及び純資産価額の3つの要素を評価会社と比準して計算する方法です。
但し、評価会社の配当、年利益、純資産の3要素のうち何れか2要素が3期(純資産は2期)連続0になると、この方式によるのではなく、純資産価額方式75%と類似業種比準方式25%の併用方式によることになってしまいます。詳しくは既報(YF-00171)の通りです。
2 純資産価額方式
純資産価額方式とは、保有資産を相続税評価額に評価替えした総資産から総負債を控除して純資産を求め、その価額から含み益に係る法人税等相当額を控除して処分価値を求める方式です。
相続税評価額による純資産価額-(評価差額×法人税等42%) |
発行済株式数 |
この純資産価額方式の場合、歴史が長い会社の保有土地等にはバブル崩壊後の現在でも当然含み益が多く、その分だけ株価が高く計算されてしまいます。
3 評価の矛盾
従来、黒字経営のために、類似業種比準方式で株価を評価してきた会社が、予期せざる貸倒等によってある時期に赤字になったとします。すると、利益や配当が無くなるために、類似業種比準方式のみで株価を評価することはできずに、純資産価額方式にウエイトづけをして評価しなければなりません。したがって、類似業種比準方式よりも株価が高くなる場合が生じます。
すなわち、黒字経営の時の株価よりも、赤字経営に転落した時の株価の方が高くなってしまうという矛盾です。この矛盾に対する救済は今のところありません。
4 むすび
含み資産の多い資産を所有しているが、利益が少ない中小企業が、予期せぬ偶発損失によって3期連続赤字になると(一定の場合)、株価が高くなるという現象が生じます。これは、純資産価額方式では土地建物等を時価すなわち相続税評価額で評価するためです。
その背景には、上場企業等の株式は事業が継続されることを前提に、取引相場のない中小企業の株式は事業の継続を前提とせずに処分を前提に評価する方式によるからです。
ところで、税務行政は租税法律主義ですから、我々職業人は、この現実をふまえた上で、より有利な対応を皆様にアドバイスすることが付加価値の付与となるものと心しております。
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(文責-横須賀 博)
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