会社法の施行に伴い企業会計上は役員賞与の費用化が既に可能となっています。そこで今回のFAX NEWSでは、この「利益処分によらない役員賞与」の取扱いについてお伝えします。
経緯
役員に対する賞与は、定時株主総会の利益処分案のなかで、株主配当金と同時に株主の承認を得て支給するという方式により処理するのがこれまでの慣行でした。
しかしながら、役員賞与をストック・オプションで支給することがあることや、委員会等設置会社では、利益処分による金銭の分配ができないなど、多様化してきているため、実務上様々な不都合が生じてきました。
そこで、昨年3月企業会計基準委員会から「役員賞与の会計処理に関する当面の取扱い(実務対応報告)」が公表され、役員賞与は、報酬と同様職務執行の対価なので、発生時に費用として処理することが適当との考えが示されました。
なお、2005年3月期決算では、従来通り利益処分によって会計処理をした会社がほとんどでした。
会計処理
設 例 (役員賞与を100としたときの従来の処理と新しい取扱い)
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従 来 |
発生時費用処理(実務対応報告) |
(1)期末時 |
仕訳なし |
役員賞与引当金繰入 100 / 役員賞与引当金 100 |
(2)総会決議時 |
未処分利益(役員賞与) 100 / 未払金 100
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<利益処分> |
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当期未処分利益 |
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400 |
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利益準備金 |
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30 |
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株主配当金 |
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200 |
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役員賞与金 |
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100 |
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繰越利益 |
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70 |
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<利益処分> |
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当期未処分利益 |
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300 |
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利益準備金 |
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20 |
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株主配当金 |
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200 |
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役員賞与 |
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繰越利益 |
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80 |
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(3)支払時 |
未払金 100 / 現金 100 |
役員賞与引当金 100 / 現金 100 |
留意点
(1) | 当分の間は、これまでの慣行に従い、従来どおり株主総会決議時に未処分利益の減少として会計処理することも認められます。 |
(2) | 役員賞与を発生時に費用として処理するためには、利益処分案の承認決議ではなく、取締役報酬賞与に関する決議や監査役報酬賞与に関する決議に基づく必要があると考えられております。 |
(3) | 法人税における役員賞与の取扱いについては、引き続き損金不算入となっております。 |
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