事業承継税制(2)
昨年12月に与党の「平成21年度税制改正大綱」が決定公表されました。今回は昨今の経済情勢をふまえて住宅ローン減税の拡充など景気刺激策がメインとなっていますが、昨年度大綱からの宿題である「事業承継税制」(YF-00457参照)が具体化しました。
また、昨年度大綱ではこの事業承継税制とセットで相続税の課税方式を抜本的に見直す予定でしたが、こちらは時間切れで見送りとなりました。当初、納税猶予額の計算は相続税の課税方式の改正を前提に考えられていたため、今回の改正による計算はやや複雑なものになりました。
今回のFAX NEWSではこの納税猶予額の計算を具体例で説明いたします。
1 納税猶予制度の概要
事業の後継者が、非上場会社を経営していた被相続人から相続等により自社株を取得し、その後もその会社を経営していく場合には、納付すべき相続税額のうち、相続等により取得した議決権株式等(発行済議決権株式総数の2/3以下の部分)に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます。
5年間事業を継続し、その後も死亡時まで株式を保有し続ければ、最終的に猶予税額の納付が免除されます。
2 具体的計算例
相続人A(事業承継者): 対象株式200,000千円、株式以外50,000千円、計250,000千円
相続人B: 株式以外250,000千円
(単位:千円)
項 目 | 通常の相続税計算 | 納税猶予額の計算 | ||
Aが株式のみ (200,000)を取得したと仮定 (Bは不変) | Aが株式の20%のみ (40,000)を取得したと仮定 (Bは不変) | |||
取得財産 | A | 250,000 | 200,000 | 40,000 |
B | 250,000 | 250,000 | 250,000 | |
計 | 500,000 | 450,000 | 290,000 | |
基礎控除 (相続人2人) | -70,000 | -70,000 | -70,000 | |
差引課税遺産総額 | 430,000 | 380,000 | 220,000 | |
法定相続分 (1/2) | 215,000 | 190,000 | 110,000 | |
同上の税額 (累進税率) | 69,000 | 59,000 | 27,000 | |
税額の総額 (×2人) | 138,000 | 118,000 | 54,000 | |
各自の税額 (取得財産で按分) | A | 69,000 | イ) 52,444 | ロ) 7,448 |
B(納税猶予なし) | 69,000 | Aの納税猶予額(イ-ロ) 44,996 |
上記の例では、Aさんは69,000千円の相続税のうち約45,000千円の納税猶予を受けることができます。
このようにこの制度には大きなメリットがありますが、不動産賃貸業のような資産保有会社が除かれるなどのさまざまな制約がある他、5年間事業継続などの要件を満たさなくなった場合に納税猶予額全額に利子税を加算して納付しなければならないなどのリスクもあり、慎重に検討する必要があります。
詳しくは当税理士法人まで。
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(文責-横須賀 博)
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