土壌汚染対策の掘削除去の問題点について
平成14年に土壌汚染対策法が施行されてから、はや7年が経過し土壌汚染に対する関心が高まりました。その具体的事例が築地の魚市場の移転問題です。そのため、不動産取引に際しては汚染を根元から除去する「掘削除去」が積極的に進められるようになりました。ただ、これによる弊害もでています。そこで、今回のFAXNEWSでは、「掘削除去」の問題点について考察したいと思います。
<掘削除去の問題点>
汚染対策が進むことは良いのですが、「汚染」という言葉だけが注目されるため、汚染の程度が低く、本来は対策が必要ないと判断される場合でも、「掘削除去」がなされることが多々ありました。これにより、掘削除去費が価格に転嫁されるばかりでなく、それまで地下で眠っていた汚染土が掘り返され、別の場所に投棄されることにより、汚染が拡散してしまうようになりました。
<問題点への対応>
このため、平成21年に土壌汚染対策法の改正法が成立し、「掘削除去」を抑制する方針へと転換が図られ、土壌汚染に対して何らかの対策が要求される区域と、汚染があっても対策の必要のない区域を創設することとなりました。この後者の区域では、健康被害の恐れがないことから、土地の形質変更をする場合に届出を行えば足り、その一方で、汚染土の搬出は厳しく管理されることになるようです。(平成22年4月に施行予定)
<掘削除去対策抑制の理由>
日本列島は、多くの火山・温泉が存在し、鉱山・鉱床が点在しています。また、これらの鉱物が溶け、堆積している海に四方を囲まれているわけですから、調査を精緻に行えばなんらかの環境基準を上回る重金属が溶出してくる可能性は十分に考えられます。
また、東京湾沿岸部などでも砒素・鉛・カドミウム、ふっ素・ほう素等が、環境基準を上回って溶出してくることが多々あるといわれています。これらの土壌汚染は、人為的なものではなく、自然的要因に由来するものであり、土壌汚染対策法は適用されませんが、環境基準を上回って重金属が溶出してくることに変わりはありません。そんな土地の上でも、これまで数千年の長きに亘って、我々の先祖は生活を営み、発展を遂げてきたのですから、環境基準を上回ったからといって、一様に「掘削除去」のような莫大なコストをかけて、無害化する必要は無いと考えられます。
<結論>
「土壌汚染」という言葉への嫌悪感に対し、購入者がどの程度冷静に要因を判断でき、過剰な汚染対策を抑制できるかが、この方針転換の実効性のカギを握っているといえます。これからは、どんな物質が、どのような原因でそこに存在しているのか知った上で、汚染物質とどう付き合っていくかも考えねばならないでしょうね。
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