消費税95%ルール見直し
既報(YF-00574)の通り、平成23年度税制改正は一部を分離して6月に成立しています。法人税率や相続税基礎控除額の引き下げなどの抜本改正は見送られていますが、今回の改正の中には消費税について事務処理上重要な改正が含まれています。
今回のFAX NEWSでは、消費税改正にある「95%ルール」見直しについて、その仕組みと実務上の留意点をお伝えいたします。
仕入税額控除の原則的な処理
消費税は、原則として、課税売上に対応する仮払消費税のみを仮受消費税から控除することとされています。この課税売上に対応する仮払消費税の具体的な計算方式は、イ)個別対応方式、ロ)一括比例配分方式のどちらかを選択適用します。
イ) 個別対応方式
すべての仮払消費税を、
(A)課税売上のみに対応するもの
(B)課税非課税両方に共通のもの
(C)非課税売上のみに対応するもの
に分類して計算します。
仕入税額控除額=上記(A)+上記(B)×課税売上割合※ |
※課税売上割合=課税売上÷(課税売上+非課税売上)
ロ) 一括比例配分方式
仕入税額控除額=仮払消費税額全額×課税売上割合 |
95%ルール
95%ルールとは、企業の事務負担を軽減するため、課税売上割合が95%以上になった場合は、上記1のような按分計算をせず、仮払消費税全額の税額控除を認めるというものです。
仕入税額控除額=仮払消費税額全額 |
今回の改正の内容と留意点
平成24年4月1日以後に開始する事業年度から、その課税期間の課税売上高が5億円を超える事業者は、上記2の95%ルールが適用できず、上記1の原則的な処理により仕入税額控除額を計算しなければならなくなりました(5億円以下の事業者は従来通りで変更なし)。
一般的に課税売上のみに対応する仮払消費税が大きい企業、つまり主たる事業が課税売上で非課税売上のみに対応する仮払消費税が僅少な企業では、上記1イ)の個別対応方式が有利になります。ただし、個別対応方式を適用するためにはすべての仮払消費税を上記1イ)の(A)(B)(C)に分類しなければなりません。
この分類作業は期中の膨大な仕訳を入力する段階で正しく行わなければ、決算時にまとめて整理することは困難です。今回の改正の適用が見込まれる企業は、早急に自社の会計システムがこれらに対応しているか、経理担当者など会計処理に関わる社員全員がこの仕組みや入力方法を理解しているかを確認し、必要に応じて社員研修、マニュアル作成などの準備をする必要があります。
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