所有者不明の空家の解決策
世田谷区で、所有者の所在が不明となった空家が民法の仕組みを利用して解体されました。
空き家対策としては「空き家対策特別措置法」(特措法)による行政代執行での解体事例が知られていますが、所有者不明の土地を迅速に換金できる民法の仕組みを使った例は都内初ということです。
今回は、この民法の仕組みを利用した空家の解体についてお伝えします。
【背景】
不動産の所有者が死亡した場合、所有権の移転登記(相続登記)が必要ですが、登記は義務ではありません。登録免許税や登記手続き費用がかかることから、登記されずに放置されている不動産が増加しており、法務省によると最後の所有権登記から50年以上経過している土地は全国で二割に上るそうです。古い建物だと登記がされていないこともあり、空家問題や所有者不明問題の一因と言われています。
また、中山間地の農地や森林など、資産としての価値が低く、当面処分などを考えていない土地を相続する場合に登記が放置されることが多いのですが、世田谷区といった不動産の資産価値の高い都市部においても所有者不明の不動産が存在します。
今回、世田谷区で解体されたのは、著しく管理不全なため「特定空家等」と判断された、73㎡の敷地に建つ木造平屋(25㎡)です。区の調査で所有者が特定できず、空家状態が長年続き、住民らから苦情が寄せられていたとのことです。
【民法第25条】
区は、民法第25条に規定される「不在者財産管理人」の選任を東京家庭裁判所に申立て、弁護士を管理人に選び、管理人が空家を解体しました。敷地は隣接する住民が買い取る意向を示しており、区が家裁に予納した解体費や管理人への報酬等は住民への売却益から返還される見込みとのことです。
【具体的なメリット】
空き家対策に適用されている特措法では、所有者不明の場合「略式代執行」と呼ばれる手続きで空家を解体する選択肢がありますが、解体費用回収の方策は示されていません。
自治体は建物を解体した後、あくまで私有財産である土地について売却等の方策を別途検討する必要があります。これまでの適用例では、死亡や相続放棄で所有者不明のため解体費用の回収が困難な例が多く見受けられたようです。
一方、民法の「不在者財産管理人」を利用した場合、建物の解体・敷地売却などの手続きを管理人が一括して請負うことができ、土地の売却による費用の回収まで迅速に行うことができます。
【注意点】
今回は、空家解体費等を上回る価格で敷地売却の見込みがあったことから、所有者不明の空家問題の解決に至りました。他人の財産を強制的に処分することになることから、行政として私有財産にどこまで関与できるか考慮が必要ですが、今後、同様事案の解決策となることは間違いありません。
ただし、売却見込み価格が解体費用さえも下回る場合や、土地の需要がない場合には、適用が困難と考えられます。こうしたトラブルを防ぐ為にも、相続の際には不動産の登記も忘れないことです。子孫にしわ寄せがいかぬよう、配慮が必要です。
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(文責-久保田一成・林達郎)
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