役員退職給与の適正額
昨年(2018年)4月、役員退職給与に関する注目すべき判決がありました。
役員退職給与は支給額が多額になることも多い上にその支給額の決定が難しく、仮に税務調査で過大と判断されると多額の追加納税につながります。
そのため、役員退職給与の適正額については様々な訴訟が提起されています。 今回は、この判決をもとに役員退職金の適正額について考えてみます。
役員退職給与の適正額計算の方法
一般的には下記功績倍率法によって計算します。
役員退職給与額 = 最終月額報酬 × 勤続年数 × 功績倍率 |
判決の概要
まず、一昨年(2017年)10月、東京地裁では上記の功績倍率を同業類似法人の平均功績倍率の1.5倍まで認めるという画期的な判決を下しました。具体的には国側主張の平均功績倍率3.26倍に対してその1.5倍である功績倍率4.89倍を認めたのです。
その後、国側が控訴し、昨年東京高裁はその東京地裁判決を破棄し、功績倍率3.26倍を超える部分を過大役員退職給与として損金不算入としました。
現在、納税者側が上告して最高裁判所で争っています。
平均功績倍率
上記算式で用いられる平均功績倍率は、過去判例によれば、その法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給状況を考慮して算定するとされています。
具体的には、財務省や国税庁がホームページ上で公表している「法人企業統計年報特集」、「民間給与実態統計調査」や税務関係の雑誌である「週刊税務通信」の掲載記事や、税務関係の書籍、東京商工リサーチのTSRレポートのサンプルなどを参考に算定するとされていますが、実際に計算することは困難です。
具体的な対応
上記東京高裁判決が平均功績倍率の1.5倍を破棄して平均功績倍率までしか認めていない以上、少なくとも現段階において平均功績倍率の1.5倍で役員退職給与の額を計算することは税務リスクが高すぎます。
また、過去の訴訟などでは税務調査時点では3.0倍まで認めている事例が多いことを考えると、3.0倍を超える功績倍率を使う場合は、それなりの計算根拠資料を揃える必要があります。
裁判で争った場合1.18倍を認定された判例もあります。
役員退職給与の額は税務リスクに対する極めて高度な判断が求められます。
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