相続路線価等による評価を否認!?
昨今、多くの方々が相続税対策に関心を持つようになってきていますが、そんな相続対策の中でもよく行われてきた方法が、多額の借り入れを行い、不動産投資をする方法です。
相続税申告の際には、債務控除の制度を使用して、相続税の納税額を減らしていくことが理屈上可能です。ただ、この制度をあまりに積極的に活用し過ぎて、相続税0円として申告した事案に待ったをかけた判決が、令和元年8月27日に東京地裁から出されましたので、
今回はその事案の概要と債務控除制度との関連について触れたいと思います。
債務控除制度の概要
相続税の債務控除は、相続する財産(例:不動産や預金、債券等の資産)から債務(借金等)を差し引き、残った部分に相続税を課税する制度です。
こうすると資産があってもそれ以上の負債があれば、相続税は0円と計算されるわけです。
債務控除制度を活用した不動産投資事案
なぜ、不動産投資が有効な相続税対策になるといわれてきたかと言うと、不動産の価格の査定方法には
(1)不動産鑑定評価による時価評価の他にも、
(2)土地は、国税庁が公表している相続税路線価による査定、
(3)建物については、固定資産税評価額による査定、などがあります。
(1)の不動産鑑定評価に比べると、(2)(3)の方法では、特に都内では実勢価格と比べて低い価格が出やすく、相続税申告には有利であり、通達で認められてきた(2)(3)の方法で不動産を査定するのが通常です。
しかし、先般の判決の事案のように、購入価格が13億円超のマンション、不動産鑑定評価によった価格でも12億円超のものが、路線価等による方式では3.3億と査定されています。
このマンションを購入する際には10億円超の借入れをしていましたので、3.3億円の不動産はありますが、10億円超の借金があり、相続税は0円と申告することができてしまったわけです。
事案の問題点と今後
相続税路線価も実は不動産鑑定士が査定しており、時価の8割といわれていますので、価格が4倍異なるというのは貸家減価等様々な別の要因もあると目されます。また、今後は高裁で争われるはずですので、この判決が確定とみるのは早計です。
ただ、形式的な路線価評価等を貫くと、かえって租税負担の実質的公平を著しく害することがある特別の事情がある場合には、不動産鑑定評価が優先されることがあってもおかしくはありません。また、相続後その不動産のうち1棟を売却し事業の継続性がないことも心象を悪くしています。
これだけの資産がありながら、納税額0円は行き過ぎということで、約3億円の追徴課税がなされました。相続対策でも、あまりにも節操のないものは特別な事情がある場合として、追徴課税も容赦なくされるかもしれませんね。
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