企業組織再編税制

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概要

 平成13年度税制改正で創設された企業組織再編税制は、それまでの企業組織再編に関する税制を抜本的に変えるものとなりました。

一定の適格要件を満たした企業組織再編(適格組織再編)については、被合併法人などの移転側の法人に対して資産の帳簿価額による移転を認め、時価との差額を譲渡損益として認識しなくてもよいこととされました。また、この場合の被合併法人等の株主についてもみなし配当課税をせず、旧株式の簿価のまま新株式に付け替えることが認められました。
 さらに、従来は切り捨てられていた被合併法人等の青色欠損金もそのまま合併法人などの承継側法人に持ち込み合併法人等で引き続き利用出来るようになりました。
 このように適格組織再編は、納税者にとって税務上有利な取扱いが多く、利用の仕方によっては多額の税務メリットを享受することが出来ます。

 しかし、一見良いことずくめに見える適格組織再編にも大きな落とし穴があり、安易に組織再編をしようとすると取り返しのつかない税負担を招くことになりかねません。

 企業組織再編税制の大きな落とし穴のひとつは、青色欠損金の利用制限です(法法57)。
 上記の通り、適格組織再編では被合併法人等の青色欠損金の引き継ぎは認められています。このことは企業組織再編を促進する効果がある反面、この青色欠損金の利用のみを目的とする企業組織再編を誘発する可能性もあります。この租税回避行為を防止するため、実質的な動機の乏しい適格組織再編については、例外的に青色欠損金の利用を制限することとされました。さらに、被合併法人等の青色欠損金だけを利用制限の対象とした場合には、逆さ合併をするなどの潜脱行為が考えられるため合併法人の青色欠損金についても切り捨てることとされています。
 つまり、青色欠損金を有する法人が例えば黒字の法人を合併しただけで、自ら持っていた青色欠損金を失ってしまうこともあり得るわけです。

 もう一つの落とし穴は、含み損に対する制限です(法法62の7)。
青色欠損金に対する租税回避行為防止策はさらに徹底していて青色欠損金として顕在化していない欠損、すなわち、含み損についても同様の制限を加えています。企業組織再編をした後に、一定の含み損のある資産を売却した場合の譲渡損失について損金不算入の規定が設けられています。

 また、平成18年度税制改正において、法律上の組織再編行為ではない事業譲渡に対しても、これらの制限が加えられました。
例えば、合併などの組織再編をせず、青色欠損金を有する法人を買収し、そのままその法人の事業を廃止して、そこに新たに黒字法人の事業を事業譲渡をすると、上記の制限を回避して買収会社の青色欠損金を利用できてしまいます。
 この租税回避行為を防止するため、青色欠損金を有する法人が買収され、事業を廃止するなど一定の行為をした場合には、その青色欠損金を切り捨てる規定が設けられました(法法57の2)。
これについても上記同様、顕在化されていない損失である含み損に対しても制限が加えられています(法法60の3)。

適格組織再編の制限

(1)青色欠損金の利用制限

<前提>
1)適格合併等に係る被合併法人等と合併法人等との間に支配関係(発行済株式の50%超を保有する関係(親子)または一の者との間に50%超の保有関係がある法人相互の関係(兄弟))があり、
2)その支配関係が合併事業年度開始の日の5年前の日以後発生している場合(新たにグループ内で設立された法人を除く)において、
3)政令で定める「みなし共同事業要件」を満たしていないときは、
次の青色欠損金は切り捨てられます。

<切り捨てられる青色欠損金>
1)支配関係が生じた日の属する事業年度前において生じた青色欠損金。
2)上記事業年度以後に生じた欠損金のうち、特定資産譲渡等損失(支配関係前に有していた含み損のある資産の譲渡損失、2)参照)に相当する部分

フローチャート
  適格・非適格判定のフローチャート

(2)特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入

<前提>
1)適格合併等に係る被合併法人等と合併法人等との間に支配関係があり、
2)その支配関係が合併事業年度開始の日の5年前の日以後発生している場合(新たにグループ内で設立された法人を除く)において、
3)政令で定める「みなし共同事業要件」を満たしていないときは、
「適用期間」において生ずる「特定資産譲渡譲渡損失」は損金の額に算入しません。

<適用期間>
適格合併事業年度開始の日から
同日以後3年を経過する日または支配関係が生じた日から5年を経過する日の早い日
までの期間

<特定資産譲渡等損失>
支配関係発生日の属する事業年度開始の日前から被合併法人等または合併法人等が有していた資産(棚卸資産、有価証券、帳簿価額が1千万円未満の資産を除く)の譲渡、評価換え、貸し倒れ、除却などの事由による損失の額

フローチャート

事業譲渡等に対する制限

(1)青色欠損金の利用制限

<前提>
1)特定支配関係(発行済株式の50%超を保有される関係)により他の者に保有されることとなった法人で、
2)支配日の属する事業年度において、その事業年度前において生じた青色欠損金又は評価損資産を有するものが
3)支配日以後5年を経過した日の前日までに、次の事由に該当することとなった場合は、
青色欠損金は切り捨てられます。

<切り捨てられる事由>
1)休眠会社が支配日以後に事業を開始すること。
2)営んでいた事業のすべてを支配日以後に廃止し、その事業規模の5倍を超える資金の受入を行うこと。
3)その他一定の事由

(2)特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入

<前提>
1)特定支配関係(発行済株式の50%超を保有される関係)により他の者に保有されることとなった法人で、
2)支配日の属する事業年度において、その事業年度前において生じた青色欠損金又は評価損資産を有するものが
3)支配日以後5年を経過した日の前日までに、前記<切り捨てられる事由>に該当することとなった場合は、

その該当する日の属する事業年度開始の日から3年を経過する日までにおいて生ずる「譲渡等損失額」は損金の額に算入しません。

<譲渡等損失額>
支配関係発生日の属する事業年度開始の日前において有していた特定資産(固定資産、土地、有価証券、金銭債権、繰延資産などの資産で帳簿価額が資本金等の額の1/2または1千万円未満の資産以外のもの)の譲渡、評価換え、貸し倒れ、除却などの事由による損失の額

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    税理士法人横須賀・久保田編集部

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