資本金はいくらにすべきか、経営者は株主として何%持てばよいのか
次に決めねばならないのは資本金の額と出資割合です。資本金の全額を1人で出資するのか、他の人に一部を出資してもらうのかということです。
出資割合によって会社経営に及ぼす影響はかなり異なりますし、また安易に決めると後々のトラブルのもとです。慎重に検討したいものです。
まずは資本金はいくらにしたらよいのかについてお話しします。
資本金の額と税務上の取り扱い
税務上、資本金の額によって扱いが異なる点がいくつかあります。その主な点は以下の通りです。
(1)資本金が1億円以下であれば
・法人税率が低く抑えられる。※
年800万円までの所得については、15%(平成24年4月1日~平成31年3月31日までに開始する事業年度に限る)の税率です。
(800万円超は資本金1億円超と同じ23.4%)。
・特別償却等の特例を受けることが可能です。
・30万円未満の少額減価償却資産は、損金算入(限度額:年300万円まで)できます。(平成30年3月31日まで延長)
・外形標準課税が適用されません。
・交際費の一部は会社経費になります。
・特定同族会社の留保金課税が適用されません。
特定同族会社とは、1つの株主グループが株式(出資)の50%超を所有する会社をいいます。
※出資者の資本金等が5億円超の大法人等で、出資割合が100%等一定の場合、適用はありません。(グループ法人税制の適用があります。)
・欠損金の損金算入限度制限の適用がありません。
(資本金が1億円超の場合、欠損金の損金算入限度額は所得の55%となります。)
(2)住民税の額は
資本金等(資本積立金や従業員数も関係する)の額によって変動します。
・資本金等が少ない方が安くなります。
(3)資本金が1,000万円未満であれば
原則として設立1年目は消費税の納税義務がありません。
・その後は特定期間の課税売上、又は給与等支払額が1,000万円を超えるか否かで異なります。
資本金の額が多ければ商売の元手が増え、同時に会社の財政基盤や信用を増しますが、反面、税金面からすると多少不利になるということです。
誰が出資するのか
資本金の額が決まったら次に決めるのは出資者です。資本金の全額を社長(予定者)1人で出資するのか、他の人に一部を出資してもらうのかということです。
そこで、出資者の権利、税務上の扱いについてお話しします。
(1)株主の権利
株式会社の株主は、株主総会で自己の意志を会社経営に反映することができる権利があります。
主に持株(出資)割合に応じて以下のように定められています。
A 原則として全ての株主に認められている権利
・株主総会の議決権
・取締役の違法行為差止請求権(公開会社の場合は6ヶ月の保有期間制限あり)
B 3%以上持っていると
・会計帳簿の閲覧請求権
・役員の解任請求権(公開会社の場合は6ヶ月の保有期間制限あり)
C 50%超を持っていると
・取締役、監査役の選任決議
・取締役の解任決議
・配当などの剰余金の分配決議
・取締役・監査役の報酬決議
D 3分の2以上を持っていると
・監査役の解任決議
・定款変更の決議
・合併、会社分割、事業全部譲渡の決議
といった権利があります。Dは会社の基本的事項に重大な影響を及ぼすので、特別決議といって普通決議よりは厳格な要件になっています。
このように、出資割合によっては自分の意志を会社経営に反映させられない場合もあります。慎重に決めるべきでしょう。
金も出すが口も出す出資者はお断りとするか、歓迎とするか、なかなか難しいところです。
(2)出資割合と税金計算
細かい点は割愛しますが、資本金の額が1億円超で、1人の株主とその同族関係者が所有する株式総数が発行済株式の50%超である場合(同族会社といいます)に、一定金額以上を社内に留保したときは、特別の税金(留保金課税)を納める必要があります※。
※資本金の額が1億円以下であっても、出資者の資本金等が5億円超の大法人等で出資割合が100%等一定の場合、留保金課税の適用があります。
会社法では、会社の機関設計がかなり自由になったこと、普通株式のみでなく、種類株式の発行が容易になったこと等の理由により、上記の権利等については会社の形態によってかなり異なります。
会社の内部組織や株式の種類等を決める際には、上記事項等を考慮することが必要です。
[平成29年4月1日現在法令等]
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