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交際費と他の科目の境界線〜実務で迷うボーダーラインの整理〜

投稿日2026.07.17

更新日2026.08.06

令和6年度の税制改正により、法人の接待飲食代の損金算入限度額が「1人あたり1万円以下」に引き上げられてから2年が経ちました。実務への定着が進む一方で、「この支出は交際費なのか、それとも会議費や福利厚生費なのか」という科目の仕分けに頭を悩ませるケースは後を絶ちません。

今回は、実務で特に間違いやすい「交際費に該当するもの・しないもの」の境界線について、事例を交えて整理したいと思います。

「誰に」「何を」「どんな目的で」で処理が変わる

取引先が絡む支出はすべて「交際費(接待交際費)」に見えますが、実は目的や金額によって税務上の扱いが変わり、会社の損金(経費)にできる枠にも影響を与えます。

主な判断基準となるボーダーラインを以下の表にまとめました。

支出の具体例 税務上の推奨科目 損金算入の可否 適用要件・実務上の留意点
取引先への訪問時に持参した手土産 (お菓子など) 交際費 原則、法人の規模に応じた限度額まで 特定の取引先に対する「贈り物」は金額に関わらず原則交際費となります。
取引先へ配るための社名入りカレンダーやボールペン 広告宣伝費 全額損金可能 不特定多数への宣伝効果を目的としたノベルティは、交際費から除外できます。
取引先の担当者とカフェで行った商談での飲食代 会議費 全額損金可能 打ち合わせの際の常識的な範囲の飲料・弁当代は「会議費」で処理できます。
部署のメンバー全員が参加した忘年会・プロジェクト打ち上げ 福利厚生費 全額損金可能 「全員が対象」であり、かつ「社会通念上、一般的に常識の範囲内と認められる金額」であれば福利厚生費になります。
特定の役員や一部のお気に入りメンバーだけで行った飲み会 社内交際費 または 給与

中小企業でも全額損金不算入

(給与時は課税)

全員を対象としない排他的な宴会は、会社での経費化が認められないだけでなく、個人の所得税対象(給与)となるリスクがあります。

1万円以下の飲食代でも「インボイス」に注意

飲食代の精算を行う上では、科目(会議費か交際費か)だけでなく、利用する「お店のインボイス登録状況」にも注意を払う必要があります。

利用した飲食店が「インボイス(適格請求書)の発行ができない免税事業者」であった場合、経過措置による消費税の計算(2026年9月末日までは80%控除)が絡むため、1万円の判定ラインが変わってしまいます。

会社の経理方式(税込・税抜)に関わらず、免税店を使うと「税引前の本体価格」に引けない消費税分が上乗せされるため、以下のように1万円のラインをオーバーしてしまうのです。


【税込11,000円(1人あたり)のレシートで比較する計算例】

・インボイス登録店の場合
11,000円 - 消費税1,000円 = 税抜10,000円(判定:セーフ!会議費へ)

・インボイス未登録店の場合
11,000円 - 控除できる税800円 = 税抜10,200円(判定:アウト!交際費 へ) ※未登録店の場合、税抜9,803円(税込10,784円) 以下に抑えないと、 1万円ライン(税抜換算)をオーバーします。

つまり、同じ「税込11,000円」のレシートでも、お店がインボイスに対応しているかどうかで、交際費になるか、会議費になるかの運命が分かれてしまうのです。ギリギリの価格帯での接待時は、インボイス登録店かどうかも併せて確認を推奨します。

領収書の「メモ」が税務調査を守る最大の武器

税務調査において交際費周辺は最も細かくチェックされるポイントの一つです。税務署から「本当に会議だったのか?」「本当に全員参加の福利厚生なのか?」と確認を求められた際、最大の武器になるのが領収書(または精算システム上)に記載された詳細なメモです。
※なお、ペーパーレス化(電子帳簿保存法)が進む現在においては、領収書の「裏面」ではなく、電子データ化した際にもはっきりと確認できる「表面の余白」や「システム上のメモ欄」へ記載・入力するよう社内で統一してください。

具体的には、
「〇〇社 〇〇様と商談(〇〇プロジェクトについて)」
「〇〇課 打ち上げ、●名全員参加」
といった詳細を明記するルールを徹底しましょう。

⚠️ 軽い気持ちでの「人数水増し」は重加算税の対象に!

ここで絶対に避けるべきなのは、1人あたり1万円以下に収めるために、実際より多い人数をメモに記載する「人数の水増し(虚偽記載)」です。

税務調査官は、飲食店の予約データや個人のスケジュール、支払い時のクレジットカードの利用明細などを照合し、不自然な点がないかを細かくチェックします。 もし虚偽の記載が発覚した場合、単なる経費の否認(認められない)にとどまらず、意図的な「仮装・隠蔽行為」とみなされ、最もペナルティの重い「重加算税」が課されるリスクがあります。

営業現場などが「これくらいなら……」と軽い気持ちで行う不正が、会社全体に致命的な税務リスクをもたらします。正しいルールに基づき、ありのままの実態を正確に記載するよう、社内での注意喚起を徹底することを推奨します。

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