連結納税制度

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制度の概要

連結納税制度とは、従来、会社ごとに個別に計算していた法人税の計算を企業グループ全体を一体として一括計算する制度です。

したがって、グループ内に赤字会社と黒字会社が混在している場合には、その赤字と黒字が相殺されグループ全体として法人税額が少なくなるという効果があります。

同様の効果はグループ会社を合併させることによっても得ることができますが、合併による場合には組織が肥大化するため、機動的、柔軟な組織再編を阻害してしまう恐れがあります。柔軟な組織再編をしながらも一方で一体課税によるタックスメリットを享受する方法として、この連結納税制度の活用が期待されます。

また、この制度は任意の届出制であり、連結納税制度を選択するか否かは法人の選択に任されています。

ただし、一度この制度を選択すると自由に取り消すことができません。
したがって、この連結納税制度を選択する際には長期的視点に立ってメリット、デメリットを慎重に検討する必要があります。

なお、当税理士法人発行のFAXNEWSでは下記の号で連結納税制度について取り上げています。

No発信日タイトル
横須賀G通信(YF-00136)1999/05/18連結納税制度とは
横須賀G通信(YF-00226)2001/11/18連結納税制度
横須賀G通信(YF-00236)2002/02/28連結納税制度の選択による税負担
横須賀G通信(YF-00250)2002/07/18連結納税申請期限迫る!
横須賀G通信(YF-00517)2009/12/18企業グループに関する税制改正
横須賀G通信(YF-00538)2010/07/18連結納税制度
横須賀G通信(YF-00610)2012/07/18連結納税制度からの離脱

メリット・デメリット

連結納税制度を選択することができる法人グループは、後述の通り法人による完全支配関係がある場合に限られます。そして完全支配関係がある法人グループは連結納税制度を選択しない場合でもグループ法人税制の適用を強制的に受けることになります。

したがって、連結納税制度を選択することによるメリット、デメリットはグループ法人税制との比較によって判断する必要があります。
項目ごとに連結納税制度を選択した場合のメリット、デメリットをまとめると下記のようになります。

(1)損益通算

連結グループ全体で一括して所得計算をします。

メリットデメリット
連結グループ内に赤字会社と黒字会社が混在する場合、その赤字と黒字が相殺されグループ全体として法人税額が少なくなります。
この相殺こそが連結納税制度の最大のメリットです。

(2)繰越欠損金

(ア)連結開始後の連結欠損金

単体納税同様10年間(H20.3.31以前終了事業年度の発生分は7年、H30.3.31以前開始事業年度の発生分は9年)の繰り越し控除ができます。
ただし、連結親法人の資本金が1億円超の場合、欠損金控除前連結所得のうち下記割合までしか控除できません。

  開始事業年度 控除割合繰越期間
  H24.1.1~H27.3.31 80% 9年
 H27.4.1~H28.3.31 65%
 H28.4.1~H29.3.31 60%
 H29.4.1~H30.3.31 55%
  H30.4.1~ 50% 10年

(イ)連結開始前の欠損金

1.みなし連結欠損金

a)非特定連結欠損金連結納税に持ち込んで利用することができます。
b)特定連結欠損金連結納税に持ち込み可能ではありますが、その利用はその持ち込んだ法人の所得の範囲内に限られます。
したがって連結親法人や他の連結子法人の所得と相殺することはできません。

2.みなし連結欠損金以外の欠損金

連結開始又は加入と同時に切り捨てになります。

メリットデメリット
連結親法人が赤字、連結子法人が黒字体質である場合、連結親法人の繰越欠損金を早く使うことができます。
連結親法人に多額の繰越欠損金があり、単体納税では7年間で使い切れずに切り捨てになることが予想される場合などは有利です。
連結子法人の中に、特定連結子法人以外の子法人で欠損金を持つ会社がある場合、この繰越欠損金が切り捨てられてしまいます。
連結親法人の資本金が1億円以下の場合は、連結子法人の資本金が1億円超であっても、欠損金の一部控除制限はありません。連結親法人の資本金が1億円超の場合は、連結子法人の資本金が1億円以下であっても、控除前所得のうち一定割合までしか控除できません。(上記(ア)参照)

A.非特定連結欠損金

(1)連結親法人の連結開始前10年以内欠損金額
(2)連結親法人同等法人(5年以内の株式移転完全子法人で連結納税開始まで連結親法人に全株保有されているもの)でその株式移転が適格株式移転であったものの欠損金額
(3)連結親法人同等法人でその株式移転が非適格株式移転であったものの欠損金額で株式移転後に発生したもの
など。

B.特定連結欠損金

(1)特定連結子法人の欠損金額(上記A.(2)(3)に該当するものを除く。)
(2)連結親法人又は連結子法人を合併法人とする適格合併があった場合に引き継がれた被合併法人の欠損金額
など。

C.特定連結子法人

特定連結子法人とは下記のような会社をいいます。
(1)連結開始前5年以内の株式移転完全子法人
(2)連結親法人により5年超保有されていた100%子会社
(3)連結親法人又はその完全子法人により設立された100%子会社
など。

(3)連結納税開始時の時価評価

連結納税制度適用開始時、連結グループ加入時には連結子法人が有する固定資産などについては直前事業年度で時価評価により評価損益を計上することになります。

メリットデメリット
1.評価損があり、その事業年度の所得と相殺できる場合
2.評価益があり、繰越欠損金を使い切り、切り捨て防止となる場合
などは有利になります。
多額の含み益が実現し、多額の所得が発生することがあります。

A.時価評価の対象となる資産

時価評価の対象となる資産は、固定資産、土地等、金銭債権、有価証券(売買目的有価証券を除く。)、繰延資産です。
ただし、帳簿価額が1,000万円未満のものや、その含み損益が少額(資本等の額の1/2または1,000万円のうち少ない金額未満)のものは除きます。

B.連結納税開始時の時価評価の適用除外

新たに連結納税を開始する場合、下記連結子法人は時価評価の適用はありません。
 1.連結開始前5年以内の株式移転完全子法人
 2.連結親法人により5年超保有されていた100%子法人
 3.連結親法人又はその完全子法人により設立された100%子法人
 4.適格株式交換によって加入した子法人
など。

C.連結納税加入時の時価評価の適用除外

すでにある連結納税グループに新たに子法人が加入する場合、下記連結子法人は時価評価の適用はありません。
 1.連結親法人又は連結子法人により設立された100%子法人
 2.適格株式交換によって加入した子法人
など。

(4)受取配当等の益金不算入

連結納税制度では関係法人株式等に該当するかどうかの判定を連結グループ全体の保有株式数で行います。

メリットデメリット
単体納税では関係法人株式に該当しない場合でも、連結納税制度では連結グループ全体で保有株式数を判定するため、新たに関係法人株式となり、益金不算入額が増える場合があります。

連結グループ全体で負債利子控除額を計算するため、単体法人の負債利子の額や資産の状況により益金不算入額が増加する場合があります。
連結グループ全体で負債利子控除額を計算するため、単体法人の負債利子の額や資産の状況により益金不算入額が減少する場合があります。

(5)貸倒引当金の法定繰入率

連結親法人の資本金が1億円超の場合、連結子法人についても貸倒引当金の法定繰入率が利用できなくなります。

メリットデメリット
連結親法人の資本金が1億円超の場合は、連結子法人の資本金が1億円以下であっても、貸倒引当金の法定繰入率が利用できなくなります。
(親法人の資本金が5億円以上の場合はグループ法人税制においても利用不可。)

(6)交際費の損金算入枠

連結親法人の資本金額を基に交際費の損金算入枠が適用され、交際費の損金不算入額は連結グループ全体で一括計算をします。

メリットデメリット
レアケースかもしれませんが、連結親法人の資本金が1億円以下の場合は、連結子法人の資本金が1億円超でも、連結親法人の定額基準枠で連結子法人の交際費を損金にすることができます。連結親法人の資本金が1億円超の場合は、連結子法人の資本金が1億円以下であっても、連結親法人の定額基準枠が適用されるため、損金算入枠がなくなってしまいます。
(親法人の資本金が5億円以上の場合はグループ法人税制においても損金算入枠なし。)

(7)寄付金

寄付金の損金算入枠の計算は連結グループ全体で一括計算します。

メリットデメリット
所得通算により所得が増加した場合、寄付金の所得限度額が大きくなり、有利になります。所得通算により所得が減少した場合、寄付金の所得限度額が小さくなり、不利になります。

(8)中小企業の軽減税率

連結親法人の資本金額を基に各種中小企業の特例規定が適用されます。

メリットデメリット
これもレアケースですが、連結親法人の資本金が1億円以下の場合は、連結子法人の資本金が1億円超でも、連結グループ全体として800万円の枠内で軽減税率を使うことができます。連結親法人の資本金が1億円超の場合は、軽減税率を適用できなくなります。
(親法人の資本金が5億円以上の場合はグループ法人税制においても適用不可。)
連結グループ全体で一括計算するため、単体納税では各社ごとに800万円の枠を使っていたものが1回しか使えず、軽減税率の適用枠が小さくなってしまいます。

(9)特定同族会社の留保金課税

特定同族会社の留保金課税の計算は連結グループ全体で一括計算をします。

メリットデメリット
1.損益通算による赤字と黒字の相殺により、留保金課税の対象となる所得金額が減少する場合があります。

2.連結親法人の資本金が1億円以下であれば適用除外となります。
1.留保金課税の計算は累進税率になっているため、単体納税の場合よりも高率の税率を適用する部分が増え、税額が大きくなる場合があります。

2.留保控除額の計算上、定額基準を適用している場合は2,000万円の定額基準が1度しか使えないため、控除額が減り税額が増える場合があります。

3.連結子法人の資本金が1億円以下であっても連結親法人の資本金が1億円超であれば適用対象となってしまいます。
(親法人の資本金が5億円以上の場合はグループ法人税制においても適用対象。)

(10)事務負担

メリットデメリット
連結納税制度特有の所得、税額計算にかかる事務負担が増大します。
また、事業年度を連結親法人に合わせるなど経理システム全般にわたり大幅な見直しが必要になるかもしれません。

有利不利の判定

連結納税制度を選択するにあたっては、上記のメリット、デメリットを総合的に、しかも、長期的に検討しなければなりません。
上記中、金額的に影響の大きな検討項目は、損益通算、繰越欠損金、連結開始時の時価評価あたりではないでしょうか。

連結納税制度を選択する最大のメリットは、いうまでもなく損益通算です。
有利不利の判定をするためには、長期的な利益予測が不可欠です。

また、従来、連結納税制度創設時から最大のデメリットとされた連結子法人の繰越欠損金の切り捨てについては、平成22年度税制改正により単体所得の範囲内で特定連結欠損金の持ち込みが可能になり、大幅に改善されました。
単体所得の範囲内での持ち込みとはいえ、単体納税と同じ状態になるわけですから、連結納税制度のデメリットとしては解消されたといってもよいでしょう。
連結納税制度を検討する以上、グループ内に赤字会社を抱えているはずです。
この赤字会社がどのくらいのペースで業績を回復するのかをいくつかシミュレーションし、最終的な判断をすることになります。
当然ながら、赤字の予測が大きいほど、連結納税制度が有利となります。

次に、連結開始時の時価評価については特定連結子法人を除外する規定があるものの、金額的には最も影響が大きいポイントになります。
特定連結子法人の定義は細かく規定されており、この判定を誤ると大きな税負担をすることになりかねません。
時価評価の対象となる連結子法人の特定や時価評価資産の特定、その評価額の算定など慎重に検討する必要があります。

連結子法人の欠損金の利用を目的とするなら、適格合併などの組織再編税制の利用や連結子法人清算による繰越欠損金の引継も合わせて比較検討すべきです。
企業グループに関する税制は複雑で多岐にわたります。
これらの制度を最大限活用して、最も有利な方法を選択するためには、法人税法全般にわたる総合的な知識と経験が不可欠です。
広い見地から慎重に検討してください。

適用対象法人

(1)連結親法人

すべての普通法人または協同組合が対象となります。
ただし、下記法人は除外されます。
1.外国法人
2.他の会社の100%子会社
3.清算中の法人、など

(2)連結子法人

連結親法人の完全支配関係にあるすべての普通法人が対象となります。
ただし、下記法人は除外されます。
 1.外国法人
 2.清算中の法人、など

対象となる連結子法人はすべて強制加入となり、一部の法人だけを任意に選択して連結子法人とすることはできません。

(3)完全支配関係

完全支配関係とは発行済株式の100%を直接または間接に保有する関係をいいます。
ただし、自己株式や一定の従業員持株会及びストックオプション株式は判定から除外します。

A社:連結親法人に100%直接保有されている。
 ∴OK
B社:連結親法人に80%直接保有され、さらに連結親法人に100%直接保有されているA社経由で20%間接保有。
 80%直接+20%間接=100%。∴OK
C社:上記A社経由で50%間接保有、さらに上記B社経由で50%間接保有。
 50%間接+50%間接=100% ∴OK
D社:上記B社経由で80%間接保有、残りの20%はこのグループ外が保有。
 80%≠100% ∴対象外

連結納税の申請

(1)承認申請

連結事業年度開始の日の3月前までに申請書を提出します。
例えばX2.4.1~X3.3.31年度から導入したい場合は、X1.12.31までに提出しなければなりません。

(2)適用の取りやめ

一旦連結納税制度を選択すると自由に取りやめることはできません。
しかし、「やむを得ない事情があるときは、国税庁長官の承認を受けて連結納税の適用を取りやめることができる」とされています。
ただ、「連結納税の適用を継続することとしたのではその事務負担が著しく過重となると認められるなど」どの程度の事情が「やむを得ない事情」となるかは、今後の運用を見るしかありません。

また、連結親法人、連結子法人の要件を満たさなくなった会社(100%保有関係が崩れた場合など)は当然、連結グループから離脱することになります。

税額計算の概要

税額計算は基本的にはグループ各社の通常の所得金額を合算して計算します。
これに受取配当等の益金不算入、寄付金の損金不算入など全体で一括計算する項目などの調整をし、連結所得金額を算出、税額計算をします。
最後にこの税額を各社に配賦して、各社で精算します。

(簡単な計算例1)
連結親法人個別所得金額10,000、連結子法人個別所得金額△3,000とします。
連結所得金額は10,000-3,000=7,000
連結法人税額は7,000×23.2%=1,624です。

連結親法人の連結法人税個別帰属額は、10,000×23.2%=2,320
連結子法人の連結法人税個別帰属額は、△3,000×23.2%=△696
となります。

連結親法人は連結法人税1,624を納税します。
そして残額の696を子会社に支払って精算します。

連結親法人仕訳:
法人税等 1,624 / 未払法人税等 1,624
法人税等  696 / 未払金     696

連結子法人仕訳:
未収入金 696 / 法人税等 696


(簡単な計算例2)
赤字法人が複数ある場合は、次のように欠損金が配賦されます。

地方税

法人住民税、事業税、地方法人特別税については、連結納税制度がありませんので、従来通り、単体納税することになります。
この場合の課税標準は、連結納税制度により各社に配賦された個別所得金額、連結法人税個別帰属額を使います。

基本的に単体納税も連結納税も影響がないのですが、
 1.連結親法人の資本金1億円以下で軽減税率が適用され、
 2.連結納税グループに大きな赤字法人がいるため連結所得がマイナスとなり、連結法人税が0円となった場合、
黒字の連結法人は、単体納税より軽減税率の適用を大きく受け、法人住民税が軽減されます。

例)単位:千円
黒字法人の単体所得 100,000
連結法人税 0

(1)単体納税の場合の法人住民税
 課税標準=法人税22,544 (8,000×15%+92,000×23.2%)
 法人住民税=3,674 (22,544×税率16.3%)

(2)連結納税の場合の法人住民税
 課税標準=連結法人税個別帰属額 15,000 (100,000×15%)
 法人住民税=2,445 (15,000×税率16.3%)
※連結法人税がある場合には、軽減税率部分と超過部分を各連結法人に按分して連結法人税個別帰属額を計算しますが、連結法人税が0円の場合、按分できないので全額軽減税率を適用して連結法人税個別帰属額を計算します。
連結納税制度の隠れたメリットです。

8.消費税

消費税には連結納税制度はありませんので、単体納税と同じです。

[平成29年4月1日現在法令等]

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